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いろいろ空想してそれを文字にしています。haiku、10行の話、空想レシピなど。
by 空想家sio


鹿埜類詩集1(苔の恋愛)

  苔の恋愛(鹿埜類3rdアルバム【睡眠窟】より)

  ああ、けふも楓の緑が
  ぼくの上に美しい陰を作っている
  五月は明るい、寺はけふも静かだ
  玉砂利を踏んでけふもあのひとが来る
  ぼくは彼女を愛している

  ほら、日傘の柄が鹿の子模様で素敵だ
  袴はえび茶色、ブーツは黒い
  彼女は綺麗だ、まるで五月の化身だ
  一年前に死んだ恋人を今も思っている
  ぼくは彼女を愛している。

 「否、ぼくがひとに恋をしていることを
  きみはきっと軽蔑しているんだろう」

  麗しき五月の苔、収集家もやってくる
  ぼくらは摘まれて、フラスコのなかで
  ぼくらは摘まれて、フラスコのなかで

  苔の恋愛、苔の恋愛。

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HP「鹿埜類幻燈博覧館」管理人、鴉氏による注釈

  この【苔の恋愛】は鹿埜類の
 偏愛していた作家、尾崎翠の作品から
 インスパイアされてできた曲の
 ひとつだと思われる。


 (これはいうまでもなく尾崎翠の代表作である
 【第七官界彷徨】であろう。
  他に、尾崎翠にインスパイアされた曲
  として、シャアプ」があげられる。


  また、この曲【シャアプ】を紹介する際に
  くわしく記すが、尾崎翠が
  作品中に頻繁に取り上げた、
  19世紀末のイギリスの作家・批評家である
  ウィリアム・シャアプ
  フィオナ・マクロオドという女性名で、
  ケルトを題材にした詩や創作を発表した。
  またシャアプは実生活でも
  女性名を使い生活をした、として
  知られている。


  ここに17才の現役の女子高生であった
  鹿埜類が(本名瀬野唯)でありながら、
  性別を隠すかのように、
  70年代少女漫画家が描いた少年たちが集う
  キジナウム風の少年のいでたちで、
  ひたすら【ぼく】として歌うことに
  こだわった秘密が
  隠されているように思われる。

  彼女は、瀬野唯でありながら、
  鹿埜類としてわたしたちの前に現れたのだ。

 (それは作家尾崎翠との出会いと
  無関係ではあるまい)

  驚嘆するほどのピアノの技術と
  少年のような
 (少女ならば拒食症のような)カラダと
  少女としか言いようのない
  甘い顔だちを持って、突如現れたのだ。

  先も言ったが、鹿埜類の
  【シャアプ】はまたの機会に紹介する。
  この解説は長くなりそうだが・・・。)
 

  【苔の恋愛】に話を戻そう。

  この曲は、美しいオーケストラによる
  ストリングスが全般に流れているせいか、
  コンサート(鹿埜類はリサイタルと呼んだ)  
  ではあまり歌われなかった。

  が、歌われると、
  途中の台詞(否、ぼくがひとに
  恋していることをきみは~のくだり)は
  軽い内容のものに変えられた。

  「否、ぼくがマカロニグラタンに
   恋していることをきみはきっと
   軽蔑しているんだろう?」

  などと、笑いを取った。


  また苔の収集家は、
 「オーギュスト」という名前だと言い、
 ファンから、
 「じゃあ、苔は
 ジルベールですか?それともセルジュ?」
 と問われ、
 「ぼくはそんな背徳漫画は
 読んでいないからわからない」
 と笑いながら答えた。

 このことにより、ファンの間
 (少女ファンが大騒ぎした)では、
 鹿埜類は「カゼキ」
 (「風と木の詩」竹宮恵子作)のファンだ、
 というのが定説となり、鹿埜類の男装姿は
 少女たちの妄想をかきたてた。

 鹿埜類はファンクラブ会報(苔類)で、
 しらっと、「どちらかというと自分は
 萩尾望都が好きだ」と書いた。

 いずれにせよ、この【苔の恋愛】は
 ファンにとっては数々の理由により、
 忘れがたい曲である。

 HP【鹿埜類幻燈博覧館 鴉随想より】



# by houki666 | 2014-01-22 15:16 | 鹿埜類詩集(吟遊詩人)

分身猫(10行de話)

まぼろしの猫を見た。
アパートの前をついっと過ぎていった。

(それはもしかしたら、風に飛ばされた枯葉かごみ袋だったのかもしれない)

猫は野良(推定野良歴12年)のようだった。
鼻の頭に十字のひっかき傷がある、しっぽの長い猫だった。

分身猫(10行de話)_b0312706_13172045.jpg





会社に行き、一言も喋らず働いた。
給湯室で持参した弁当(塩鮭、煮豆、たくわん、ごはん)を食べ
2時間ほど残業(居残りともいう)をして、寒さに首をすくめ、帰った。

アパートの前で、猫はわたしを待っていた。

翌日、わたしは12年勤めていた会社を辞めた。


10行DEおしまい。






# by houki666 | 2014-01-22 13:31 | 10行de話(あなたの隣に)

橇、森へシルクハットの紳士と往く

haiku(俳句)兎穴。

ここは【haiku】をこよなく愛する紳士が
森の奥に開いた穴(hall)

haikuとは、
17頭(文字)の木馬が回るメリーゴーランド。

小さい扉を開くと、
大きな秘密の庭が広がっているみたいな、詩。

カレイドスコープみたいな世界。

紳士は誘う。森の奥へと、その兎穴へと。

橇、森へシルクハットの紳士と往く_b0312706_15032080.jpg 









紳士は黒いマントを着て、シルクハットをかぶっています。
わたしより少し長生きしていて、髭は金色です。

森には雪が積もっている。
紳士と一緒に落ちていこう。


橇、森へシルクハットの紳士と往く




# by houki666 | 2014-01-21 18:10 | haiku兎穴(紳士と共に)