いろいろ空想してそれを文字にしています。haiku、10行の話、空想レシピなど。
by 空想家sio


フィリフヨンカと。(空想ごはん)

今日は、フィリフヨンカと
海辺までピクニックに行った。

フィリフヨンカは朝早く起きて
おべんとうを作ってくれたらしい。

でも、それをうっかり台所の床に落として
台無しにしてしまった、と言う。

「ばいきんがついているかもしれないから
ゴミ箱に捨ててきたの」

「ついてても大丈夫だったのに」

わたしは冷たい海風を頬にあてながら
からっぽのバスケットを眺めた。

「だけど、病気になったら困るわ」
「お腹が空いても困るよ」



わたしとフィリフヨンカはピクニックを諦めて
町に下りて、珈琲を飲んだ。

「湯気がご馳走ね」

フィリフヨンカは湯気を前髪にあてながら言った。
海からの風で前髪が跳ね上がっているのを気にしているのだ。

「この店には飲み物しかないのね」

わたしは不機嫌になって言った。
珈琲よりケーキが食べたかったのだ。

「ごめんなさい、そういえばここに来るのは
お腹が空いていない時だったわ」

「・・・・そうなの」

わたしたちは珈琲を飲んで、それぞれの家に帰った。



夜、フィリフヨンカがTwitterでつぶやいていた。

(窓ふき女というユーザー名だ。
青いヒヤシンスの絵をプロフィールの画像に使っている)

【今日、お友達とピクニックに行った。空のバスケットを持って。
わたしはそこに友情を満たして行ったつもりだったけれど
お友達はそこにお弁当が入っていないことに腹を立てていた。
珈琲店に入ったらそこにケーキが無いことに腹を立てていた。
お弁当もケーキも無かったけど、そこにはわたしがいたのに】

わたしは呆れたが、一応リツイートしておいた。

すると、なぜか、このフィリフヨンカのつぶやきは
数々のひとに拡散して、翌朝には詩として認知されていた。



翌週、またフィリフヨンカとピクニックに行った。

バスケットは満杯で、サンドイッチやらチキンの他に
わたしの大好物のラズベリーケーキが入っていた。
大きなポットにはスパイス入りの珈琲が入っていた。

珈琲を小さなカップに注ぎ、フィリフヨンカは言った。

「友情に乾杯」

わたしは乾杯した。



その夜、今度はわたしがつぶやいた。

(わたしは、まがりネジ、というユーザーネームだ。
針鼠の絵をプロフィールの画像に使っている)

【お腹が一杯だと腹は立たない】

フィリフヨンカはリツイートしてくれなかった。

                                                                    (fin)


【このお話に出てきたお食事】

友情(バスケットに詰まっていた)
珈琲(湯気もご馳走)
サンドイッチ(サーモンとディル入りクリームチーズ)
チキン(ロールして蒸した鶏肉)
ラズベリーケーキ(ラズベリー入りパウンドケーキ)
スパイス入り珈琲(潰したカルダモンと一緒に淹れたコーヒー)


[PR]
by houki666 | 2014-01-23 14:56 | 空想ごはん(何がご馳走?)
<< 寒波襲来(10行de話) トランプを繰るのは羊、彼がジョ... >>