いろいろ空想してそれを文字にしています。haiku、10行の話、空想レシピなど。
by 空想家sio


大魔法使いペトロジリウス・ツワッケルマンと。(空想ごはん)

30年ぶりに会うことになった
大魔法使いペトロジリウス・ツワッケルマン
大銀杏の木の下で待ち合わせした。

彼は突出して目立つ(何しろ魔法使いなので)ので
わたしは思い切り、地味な格好をして行った。

ベージュのセーターに黒いスカートを履いて
黒と白の千鳥格子のマフラーをして行った。

案の定、ツワッケルマンは箒に乗って
大銀杏の木の上から現れた。

はらはらと銀杏の黄色い葉を散らし、
急降下して、「プリヴィエート!(露語でやあ)」と言った。

(なんと派手な登場の仕方!)

わたしはため息をついた。
多分、彼は変わっていない。


ツワッケルマンはわたしのマフラーを誉めた後、言った。

「それで何を食べようか?」

わたしは答えに窮した。

(どうせ彼はじゃがいも料理を食べるに決まっているのだ。
妻だったわたしをじゃがいもの皮むき機械にみたいに扱って、
洗い桶いっぱいのマッシュポテトや百もの芋団子を作らせたのだから)

ツワッケルマンは黙っているわたしの顔を覗き込んで言った。

「もし、きみがなんでもいいというのなら、
ロシア料理でもいかがかな?温かいボルシチでも」

わたしは赤くなった頬をマフラーで隠し、頷いた。

(何かを、こうだ、と、勝手に決めつけていて、
それがあっさりと外れたときの恥ずかしさったら!
銀杏の葉に埋もれて地球の裏側までもぐりたくなった)



数分後、(箒に乗ればどこでもひとっとび)
ツワッケルマンとわたしはロシア料理店にいた。

バラライカが美しい音色を奏でているなかで、
ピロシキを食べ、ボルシチをゆっくりとすすり、
ロシア風の餃子も食べた。


ツワッケルマンはとても紳士で、店員に、
「このご婦人にロシア風紅茶を」というほどだった。

(以前、彼はわたしを、ばか、腹の立つ奴め、
としか呼ばなかった。なのに、ご婦人、だなんて。)


食事の後、彼は

「自分は今、ロシアに魔法技術学校を開設して
そこで校長をしている」

と言った。

そこで世界中から集まったたくさんの魔法使い候補に
魔法を教えているのだ、と。

「校長なんだ」

(ダンブルドア校長ならぬ、
ツワッケルマン校長なのらしい)

「へえ、それはすごいわ」

彼がひとにモノを教えることができるだなんて
本当に意外だった。


彼は両手の指をテーブルの上で組んで、
静かなまなざしでわたしを見、

「良い魔法使いをたくさん育て、世界の平和に役立てたいんだ」

と言い、それがきみへの償いにもなるだろう、と微笑んだ。


かつての夫、大魔法使いツワッケルマンはすっかり善人になっていた。

(多分、スズガエルの沼の黒い水に浄化作用があったのでしょう)



アパートに帰って、彼の作ったという魔法学校を
Googleで検索してみた。

りっぱなホームページがあり、ロシア語、英語、ドイツ語
日本語、その他7カ国語で読めるようになっていて、
わたしは日本語でじっくりとそれを読んだ。


ベッドに入って、

(精油を垂らしたお茶をゆっくりと飲んだ。
わたしは魔法使いの妻だったので、薬草や
精油には精通していた。今はそれを仕事にしている)

わたしは独り、くすくすと笑った。

魔法学校の初級生の魔法の授業に
「じゃがいもの皮むき」があることを知り、笑った。


かつての夫大魔法使いペトロジリウス・ツワッケルマンは
(ツワッケルマン校長は)

その魔法を習得するにあたって注意することを述べていた。


「じゃがいもの皮むきといった、自分でもできることを
魔法によってやろうというのはあまりよくないことです。

誰かのためにじゃがいもを剥く、、
或いは、誰かがあなたのためにじゃがいもを剥く、
ということは、実は人生において大変すてきなことなのです。

もしあなたがたがこの魔法を習得しても、
愛するひと、大切なひとのために
時々、じゃがいもを剥いてあげてください。

そのほうが実はおいしいのですよ」


                                                                   (fin)


(このお話に出てきたお料理)

マッシュポテトと芋団子(記憶のなかで)
ピロシキ(中は肉と野菜)
ボルシチ(サワークリーム添え)
ロシア風餃子(青い玉葱のようなポットに入っていた)
ロシア風紅茶(ジャムをたっぷり)
精油を垂らした紅茶(檸檬とローズマリー)
誰かのために剥くじゃがいも(未来のために)





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by houki666 | 2014-01-28 17:09 | 空想ごはん(何がご馳走?)
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