いろいろ空想してそれを文字にしています。haiku、10行の話、空想レシピなど。
by 空想家sio


如月といふ寂しさの井戸があり (haiku兎穴)

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 haiku兎穴




 今夜も紳士と共に
 深い穴の底で
 文字たちの小さき乱舞を。


紳士は今夜、お弔いの格好をしている。
葬儀に出たらしい。

釣り針のように、鼻の下で髭をひねり
少しだけ、頬におしろいをはたいている。


わたしは少し前に母親を亡くした。

紳士はそれを知っているので、
時々、オンナのような声で
わたしの名前を呼んでくれる。

(今夜もそうだ)

特別だ、と笑って
ココアを淹れてくれる。

今夜の句は、わたしが詠んだ。

紳士がそれを詠み上げる。



如月といふ寂しさの井戸のあり

死は黒い釦のよう、胸の穴に留める

冬の底、幽霊と住み父を捨てる



おまえは莫迦だね、と紳士が言った。

母の声にそっくりだった。



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by houki666 | 2014-02-03 20:22 | haiku兎穴(紳士と共に)
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