いろいろ空想してそれを文字にしています。haiku、10行の話、空想レシピなど。
by 空想家sio


小豆を煮る (25行DEお話)

今朝、大雪の影響で
母がいつも行くデイサービスが休みだった。

この1年、母は認知症が進み、
わたしが仕事に行っている間、
独りで家に置いておくのが不安で、
せめて夕方まででも、と
週5日デイサービスを利用しているのだ。

雪のなか、仕事に出かけようと
玄関で長靴を履いていると
母が後ろに立って言った。

「足下に気をつけていきなさい。
あんたの好きな小豆を煮ておくから
試験、がんばりなさい」

わたしははっとして振り返った。


母がいた。
ママがいるから大丈夫よ、という顔で微笑んでいた。

わたしに傘を渡し、コートの襟を直してくれた。


二十数年前、わたしは大学受験の試験を受けた。
その日の朝、(今日の雪には及ばないが)雪が降り、
母は、長靴を履いて試験に向かうわたしに、そう声をかけたのだ。


駅に向かいながら、わたしは
積もった雪に足をとられ、何度も転んだ。

でもわたしは嬉しかった。
雪に感謝をしながら、駅まで歩いた。


夜、わたしが母に小豆を煮ようと思う。

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(25行DEおしまい)

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by houki666 | 2014-02-15 15:19 | 10行de話(あなたの隣に)
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