いろいろ空想してそれを文字にしています。haiku、10行の話、空想レシピなど。
by 空想家sio


喪い続ける。(夢のはなし)

うたた寝をして、夢を見た。
1年半前に亡くなった母が夢に出てきた。

(母が夢に出てきたのは3度目だ)

夢のなかでわたしは
母とわたしの娘ふたりと
父の弟とその奥さんといた。

瀬戸内の海沿いを走るという電車になかにいた。

その電車はおそろしく速いスピードで走り
おまけにその線路はまっすぐではなく
うねうねとまがりくねり、
あろうことか、直角に曲がるところもあった。

わたしは娘に心配をかけないように
ユーモラスな口調で叫んだ。

正直恐怖を感じていた。

「ねえ、これって脱線しないわよね」

母は答えた。

「だいじょうぶよ、そんなことにはならない」

母も怯えていた。

が、しかしその怯えが
わたしたちに伝わらないように必死で
明るい声を出していた。

それが、自分の故郷(父の故郷でもある)に
向かう電車だったかもしれない。

娘と孫を連れての久々の帰郷だったのだ。



でも数分後、電車は脱線し、田んぼと畦のうえに倒れた。

わたしたちは投げ出され、わたしたちは田んぼに
うねうねと走っている線路の上に残された。


母は線路に落ちている電線のようなものをつかんだ。

その先についているレバーのようなものを慌ててつかみ、
胸に押しつけるようにして、それを強くひっぱった。

それらにはまだ電気が流れているようだったので
わたしは不安になったが、母の動きを止めなかった。

母は電車を再び動かそうとしているようだった。

そのてきぱきとした動きを見て、
もしかしたら母は電車を修理する方法を
知っているのかもしれない、と思ってしまったのだ。


しかし異変が起きた。

電線と鉄のレバーがその熱で母の胸に溶け込んだのだ。

(案の定、そこにはまだ電気が流れていたのだ)

わたしは母の衣服が熱で溶け、
母の乳房があらわになるのを見、慌てて走り寄り、
レバーを母の乳房から剥がした。

乳房の皮膚が、レバーの表面についていたが、
躊躇はしていられなかった。

レバーに続いて、細い針金(電線の内部?)をも剥がした。
針金は熱を帯びて真っ赤に焼けていた。

母の乳房にはそれが数本張り付いていた。

わたしは必至でそれを剥がした。

剥がせば、相当の痛みがあるとわかっていたが、
剥がすしかなかった。

母の命をすくいたかった。


レバーと針金を畦に投げ捨て、わたしは大声を出した。

「ハンカチかタオル!!」

わたしは自分の娘ふたりと
父の弟とその奥さんを振り返って叫んだ。

誰も何が起こったのかわかっていなかった。
それどころか、ハンカチってなに?という顔をしていた。

「ハンカチ!患部に当てるの!
誰か、救急車を呼んで!」

わたしはふたたび叫んだ。

わたしの上の娘が体を跳ね上げるかのように
持っていたバッグを開けた。

「あんた、何やっているの!
電話持っていないの?
病院に電話して!」

わたしは父の弟に向かって怒鳴った。



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そこで目が覚めた。

おかあさん、と声が出た。


すぐそばで勉強をしていた上の娘が振り向いた。

「悪い夢を見たから、もう一度寝る」
というと、娘はうなずいた。


そしてわたしは毛布をかぶり、
乳房をくるむように体をまるめた。

涙が流れた。


まだわたしは母を喪い続けている。





※これは本当に見た夢。
あまりにも鮮明で、悲しく、
でも、忘れたくないので
番外編で【10行DEお話】に入れてみました。

(この夢に出てきた母は
病気になる前の元気な頃の母でした)

記せば残る。残すためにひとは書くんだなあ。







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by houki666 | 2014-02-22 16:19 | 10行de話(あなたの隣に)
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